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江戸時代の旅行バイブル!? 八隅 蘆菴 著『旅行用心集』

f:id:hase-base:20220321142410p:plain こんにちわ、長谷部さちこです😊

秋の行楽シーズンになりましたね。9月は3連休が2回があり、10月も即位礼正殿の日が祝日になれば4連休!という方もいらっしゃるかも知れません。紅葉を見に出かけよう!涼しくなったからちょっと遠出でもしようかなと思っている方に旅行安全祈願としてこの本を送ります。

この本は私が図書館に足を運び、地理・旅行コーナーを通る際にいつも横目で気にしていた本です。

日本や世界各国の有名観光地のガイドマップに並んでひっそりと「旅行用心集」が・・・。旅行『用心』って・・・。しかも表紙はめっちゃレトロ(浮世絵)!面白そう・・・!

今回手にとってみたら想像以上にいろいろぶっ飛んでいて面白かったのでご紹介致します。

文化庚午6月とは・・・?

この本は文化庚午6月に書かれたものを現代語訳したものです。

文化庚午6月がいつなのか調べてみると・・・

1804年から1817年の13年間、徳川家斉の時代が『文化』という元号だそうです。享和の後で、文政の前に当たります。

でもって庚午とは『西暦年を60で割って10が余る年が庚午の年となる』そうなので(Wikipedia先生より)1810年になるそうです。

つまり文化庚午6月とは1810年6月と読み解くことができます。約200年前、江戸時代の頃のお話。

この本はかねてよりの旅行好きの八隅 蘆菴(やすみろあん)さんがこれまでの旅で身につけた知恵をまとめた江戸時代では最新であり必携の旅行バイブルであったと予想されます。

江戸時代の旅行とは

この本の自序、まえがきは

人々が仕事のいとまに伊勢参宮に旅立とうとして、道連れをさそい、いつが吉日だからその日にしようと決め、あちこちから餞別ものをもらい、家中でその支度のあれこれに心うきうきとしているさまは、なんとも気持ちのひきしまるものである。 (中略) 一生のうちに一度は伊勢参宮に行くというのは、日本に伝わるありがたい習わしではないだろうか。

という一文から始まります。

そっか、江戸時代の旅行ってお参りが目的なんだ・・・。吉日を考えるとか餞別をもらうとか今もう無いな・・・。と冒頭の一文からパンチを食らったような気持ちになりました。

なかでもいざ出発の日となると、親族や友達などが、町外れまで見送りに行き、酒を酌み交わしながら、旅行中はあんなこと、こんなことに注意しなさいなどと、それぞれが親切に言ってやるようすは、はたから見ていてもうらやましいものだ。

現代にも通じる道中用心

  • 旅行に持っていく物は、懐中物(財布)のほかは、なるべく少なくしなさい。持ち物がたくさんあるとなくしたりして、かえってわずらわしいものである。
  • 朝は気ぜわしいため、持ち物を忘れたりするものだから、夜のうちによく調べて、いるものいらないものを考えて荷造りし、散らからないようにしなさい。足袋は寝床の中で履けるぐらいに準備をしておかなければ、朝出かけるのが遅くなってしまう。
  • 朝飯の用意ができるまでに、草履さえ履けばいいまでに身支度をして、それから朝飯を食べるのがよい。
  • とりわけ疲れたときには、熱い風呂にいつもより長く入れば、疲れはとれる。ただし、入浴中に顔を何度も洗ってはいけない。顔を何度も洗うとのぼせてしまう。
  • 食後は絶対に急いで歩いてはいけない。馬や駕籠(かご)に乗るときも速度を速くしないように。もし転んだり落馬したりすると、食べたてでは腹の中が落ち着いていないために、気を失ってしまうことがあるから用心しなさい。
  • 用足しに行きたいのをがまんして、馬や駕籠に乗るのは決してしないこと。落馬したりすると心臓に負担がかかり死んでしまうことがあるものだ。
  • 武士はもちろん町人でも、途中で馬方や人足などが思い通りにならないことがあっても、がまんすることが大切である。
  • 旅の連れはせいぜい5、6人程度までがよい。大勢で行くのはよくない。人はそれぞれ考えることが違うから、大勢で長旅をすると、きっとうまくいかない者が出てくるものだ。

旅行の心得は今も昔も変わらないんですね。

私は旅行に行くとだいたい朝寝過ごしてしまって(確信犯です)急いで朝ごはん、そして朝ごはんの後もベッドにごろん、そしてチェックアウトギリギリに荷物を詰め始めるタイプの人間なのですが、今後は

  • 朝飯の用意ができるまでに、草履さえ履けばいいまでに身支度をして、それから朝飯を食べるのがよい。

という言葉を胸にしまっておこうと思います。

試してみる価値あり?な旅の豆知識

船に酔わないための良い方法

一、船に乗るときに、その川の水を一口飲むと船に酔わない

一、船に乗る時に、陸の土を少し紙に包み、へその上に当てていれば酔わない。

くたびれを治す秘伝

一、茶屋で休むとき、草履を履いたまま足をぶら下げて腰掛けてはいけない。

一、ひどくくたびれた時は、風呂に入った後、焼酎を足の三里より下、足の裏まで吹き付けるとよい。手で塗ったのでは効かない。

一、夏の道中で、笠の下に桃の葉を入れてかぶると、不思議に暑さを感じないものだ。

旅のトラブルこそが一番の思い出!?

この他にも旅に持って行くと良い薬(漢方)や、どの方角から風が吹くとどんな天気になる、というのが事細かく書かれています。

関所間ごとの距離や日本の名湯案内など情報は多岐に渡っており、面白く読みながら歴史を感じることができます。

この本には、いろいろと「○○に気をつけなさい」「○○に用心しなさい」と書かれているのですが、旅のトラブルこそが一番の思い出になったりしますよね。

江戸時代に比べて現代の旅行は当たり前ですが、旅行は本当に安全で身近で手軽なものになったとこの本を読んで感じました。旅行が安全にできることに感謝しながら秋の行楽を楽しんでくださいね!

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