The Book'n Den

今WPからお引っ越し中です

日常を覗く楽しさ さくらももこ 著『たいのおかしら』

f:id:hase-base:20220413161411p:plain 今回ご紹介する1冊はさくらももこさんの「たいのおかしら」です。

するする読めるのがエッセイのいいところ

風邪か花粉症か、はたまたその両方なのかは分かりませんが、なんだか体調が優れず頭がボーッとする日々を過ごしていました。

こういう日は何もやってもぼんやりしてしまってうまくいきません。

本を読もうかなと思って本を手に取っても全然調子が出ず、どうしたものかと思ったり。

ビジネス本を読んでもただ文字を目が追っていくだけ、小説を読んでも情景を思い浮かべることが出来ずに同じページを何度も行ったり来たりする始末でした。

いっそ寝てしまおうかとも思ったけど寝込むほど体調が悪いわけでもない。

そんな時はエッセイを読むことにしています。

エッセイ:随筆(ずいひつ)とは、文学における一形式で、筆者の体験や読書などから得た知識をもとに、それに対する感想・思索・思想をまとめた散文である。 随想(ずいそう)、エッセイ、エッセー(仏: essai, 英: essa)などともいう。「essai」の原義は「試み」であり、「試論(試みの論文)」という意味を経て文学ジャンルとなった。(Wikipediaより引用)

エッセイとは今で言うブログの記事を本にしたようなもの。(だと私は思っています)

作者の普段の日常を覗く事が出来、また自分とは違う生活を垣間見れるからこそ面白く、新たな発見があるのです。

さくらももこさんのエッセイが好き

さくらももこさんはこれまでに数多くのエッセイ を出版されています。

もものかんづめ

さるのこしかけ

今回ご紹介するたいのおかしらは上記2作に続く「○○の○○」シリーズです。

今回もさくらももこさんが歯の被せ物が取れてしまい、歯医者に行ったり、新しい習い事(習字)を始めるエピソードが載っていたりと、とても面白く、ふふふと微笑みながら読んでいました。

さくらももこさん以外にも多くの方がエッセイ本を出版されていますが、私はさくらももこさんのエッセイは「クスッと笑えて、ほろりと泣けて、じんわり心に残る」と思っています。

例えば歯医者で神経を抜かれてしまうという、聞くだけで顔を歪めてしまうような想像したくもない出来事を面白可笑しく表現出来るのはやはりさくらももこさんならではだと思います。

もちろんご本人もその瞬間はきっと辛く苦しい体験をされているのでしょう。

でもさくらさんがそういう辛い思い出を少しでもコミカルに書いて残して置いてくれることで、私たちが後に同じ体験をした際に「さくらさんはこうだった・・・」と思え、勇気を持てるのではないでしょうか?

少なくとも私は今後もしも歯の神経を抜く、ということになったらこの本を再度手に取り、きっと該当のページを読んで心を落ち着かせるでしょう。

辛いことも「最終的に笑えることになる」と教えてくれたのがさくらももこさんのエッセイだったと思います。

最後の思い出

この本の中で一番じんわり考えさせられたことは愛する人や物と「いつ最後の別れが来るかわからない」ということでした。

当たり前といえば当たり前ですが、その辛さは体験した人にしかわからないもの。

私たち読者はその体験を本を読み、疑似体験することで、いつか来る最後の別れを悔いのないようにするように努めることしか出来ません。

さくらももこさんは家で飼っていたネコ、ミーコと喧嘩別れのような形でお別れをしてしまいます。

ミーコがこの世からいなくなってから伝えたい思いがたくさん湧き出てきますが、時すでに遅し。

人とネコという言葉が通じているのか、通じていないのか、微妙な関係性ですが、私はきっとさくらももこさんとミーコはお互い素直になれない部分はあったにしろ、心が通じていたと思います。

だからこそもう会えない・思っていたいことを言えないとなりその心情を考えるだけで、心がぎゅっと締め付けられてしまいます。

毎回友達や親と別れる時は大げさかも知れませんが、「これが最後」と思い、悔いのないように毎日を過ごさねばと改めて思いました。

なんでもない日常を知ることの癒し効果

SNSが普及し、普段の日常では接することのない人たちの考えを知ることが出来、SNSの中で頭角を表すためには有益な情報をいかに流せるか、が1つのポイントになっていると思います。

有益な情報は確かに時にとても便利です。しかし、有益な情報ばかりに囲まれていると逆に疲れてしまうところがあるのも現実ではないでしょうか。

そんな殺伐としたSNSの中にこういう今日明日何か役に立つわけじゃないけど、心がぽっと暖かくなるような、そんな話があると私はとても安心します。

何だかちょっと疲れたな、そんな時にはぜひ、軽めのエッセイを読んでみてください。きっと心の栄養剤となってくれると思います。