あなたは「あの日に戻りたい!過去に戻りたい!」と切に願ったことは有りますか?
今回ご紹介する1冊は過去に戻ることが出来るというヒミツを持つ喫茶店で起きた感動のストーリーが描かれた、川口俊和さんの「コーヒーが冷めないうちに」です。
2017年本屋大賞にノミネートされ、2018年には映画化もされた心温まるこの1冊。
この本を読んだことがない人でもこのタイトルをきっとどこかで耳にしたことがある人が多いのではないでしょうか。
出会いと別れの季節の前に、大切な人を思い浮かべながら読んでみてください😊
表紙帯より
お願いします、あの日に戻らせてください。 「ここに来れば、過去に戻れるって、ほんとうですか?」 不思議なうわさのある喫茶店フニクリフニクラを訪れた4人の女性たちが紡ぐ、 家族と、愛と、後悔の物語。
ー4回泣けます。
私はこの「4回泣けます」の文字に惹かれてこのてこの本を手に取りました。
本を読んで泣きたい気分の時ってありますよね・・・。
泣きたい気分の時に「この本は泣けます」と書いていると思わず手に取ってしまう私です。
あらすじ
ここは喫茶店フニクリフニクラ。
巷では「この喫茶店では過去に戻ることが出来る」という不思議なうわさが流れています。
フニクリフニクラへ過去に戻りたいという人が大勢訪れますが、実際に過去に戻ることが出来た人はごくわずか。
なぜなら・・・
- 過去に戻るためには様々なルールを守らなければいけないのです。例えば、 過去に戻ってもこの喫茶店を訪れた事のない人には会う事が出来ない
- 過去に戻ってどんな努力をしても現実は変わらない
- 過去に戻ることが出来るのはこの喫茶店のとある席に座った時だけ
- 過去に戻ってもその席からは移動することが出来ない
などそのルールはとても細かく、多岐にわたります。
そして一番大事なルールは「過去に戻れるのはコーヒーが暖かい間だけ」、ということ・・・
感動必至のミステリー本?
この物語は、この過去に戻るための複雑なルールを受け入れ、それでもなお過去に戻ることに挑戦した4人のお話です。
本に登場する人物が徐々に絡み合っていく連続短編小説となり、「恋人」「夫婦」「姉妹」「親子」の4本立てとなっています。
心温まる感動ストーリーと銘打っていますが、理屈では理解出来ない不思議な現象が起こるが故、ミステリーの要素を含んでいる1冊としても楽しむことが出来るでしょう。
物語は解決されない疑問点を残したまま終わりを迎えます。
ハッピーエンドでもなく、悲しい結末でもなく、どこかモヤモヤっとした気持ちのまま終わりを迎える結末がこの物語の舞台となっている喫茶店フニクリフニクラのコンセプトとリンクし、世界観が統一されているなぁと感じました。
過去に戻る意味とは?
過去に戻ってどんなに努力しても現実は変わらないのに、どうしてそれでも過去に戻るのだろう? 過去に戻る意味って一体何だろう? いっそ忘れてしまって生きて行ったほうが良いのでは?
そんなことを考えながら物語を読んでいると、目の前に起きていることが全てなのではなく、その背景にあるもの、目には見えない人の優しさや温かさが隠れていることに気付くことが出来ました。
出来なかったことを悔いているだけでは本当の事実は見えて来ません。
過去に戻るということは一見過去にすがっている出来事のようで、実は未来に向かって歩いている行為なのだなと思うそんな1冊でした。
以前児童養護施設の館長さんが、
「過去を振り返るってことは一見後ろ向きなことに見えるけれど、そうじゃない。 ボートというのは前に進むために後ろを向いて座らなければならない。 それと同じで前を向くためには後ろをみなければいけないこともあるんだよ」
と言ってくれたことを思い出しました。
映画と本、どっちから味わう?
私はこの「コーヒーが冷めないうちに」の映画版はまだ見たことが有りません。
しかし、映画の予告編を見ているだけでも書籍版と「あれ?ここちがうな・・・」という箇所が何箇所か見つかりました。
また、私の頭の中の喫茶店フニクリフニクラよりも映画版の喫茶店フニクリフニクラはとても広かったです。(私が思い描いていた喫茶店フニクリフニクラはどちらかと言えばバーみたいな感じ)
みなさんもぜひ書籍版からでも良し、映画版からでも良し。ぜひ味わい比べてみてくださいね😊
***
これまでの書評の寄稿先一覧、仕事依頼詳細ページです👇